こちらが元請、向こうは下請的な立場となる予定だった。
実はうちの会社の先代の社長が会社を興す時、A社の社長のお父さんが大変助けてくれたそうで、そのご縁で是非と向こうから声をかけてきたとのことで、まさに渡に船だったらしい。
聞いてた話だと
・経験のある社員は5人。基本自社で一から十まで請け負うことでコストカットしてる
・最近新しく社員を雇ったので、さらに多くの案件に対応できるはず
と、まあまあ期待できそうな感じ。
で、上司と、当時社会人2年目の私で相手の会社に出向くと、向こうのA社長と女性社員Bさんが出迎えてくれた。
社長はニコニコしている人だったし、Bさんも私と同い年ということで話もしやすかった。
その日は問題なく終わり、「まああそこになら任せられるかな」と上司も満足げ。いい雰囲気で会社へ戻った。
その日たまたま緊急の案件が相次いでみんなで残っていたのだけれど、私の社用携帯が鳴った。
誰だと思って出てみたら、Bさんの先輩だと名乗るCという人だった。
Bさんが泣いて話にならないから私が電話した、とCがとんでもないことを話し始めた。
・Bは社会人ではなく、高校一年生だ。
・夏休みの間だけ、書類整理のバイトとして数日前に雇われた
・なのに、いきなり他の会社の商談に参加させられた
・社員がいると説明があったそうだが、その社員達は全員とっくの昔に辞めている。
退職届が机の上に散らかってたのでわかったそうだ
・嘘がバレないよう、急いで下請を見つけろとAが指示を出している
・高校1年のBさんにそんなこと出来るはずもなく、社長から今までずっと怒鳴られてた
つまりA社長はBさんの年齢や社員数まで偽ってたということになる。
こんなこと初めてで、上司も会社のメンバーもびっくりしてしまった。
すると隣で話を聞いてた先輩が、「待てよ?A社?そこ俺の友達が働いてたような」と言い出した。
先輩は元々下請側の仕事をしていて、そこから転職してきた人。だからA社と同業の仕事に就いてる友達が沢山いる。
すると友達がA社で働いてたそうで、色々教えてくれた。
・二ヶ月いたが、仕事になった試しがない。パソコンのパスワード教えてもらうのに一ヶ月かかった。
・職人として入ったのに、Bさんと同じく下請を探せと言われた。
・ところが他社の殆どから「早く辞めなさい」「おたくの社長頭おかしいから」と断られた。
・同じビルに入ってる他社の女性社員を男子トイレに引き摺り込んで怒鳴り散らしてた(ビル共有トイレのハンドソープの減りが多いから)
・さっき俺のところに社長から無給で下請探せって指示が来てた。あれお前の会社と取引するためでは?
・Bさんが見つけたかわからないが、何人か自殺してるようだ。訴訟の書類見たことがある
すぐさま上司がAに確認したところ、最初はBが嘘ついてるなどと偽っていたが、とうとう隠し切れなくなり、
「うるせー!クソ会社!クソアマ!俺より、俺より学歴もないくせに!俺より身分も低い癖に!!高貴な身分の俺が、話し合わせてやったのに、があああああああ」
と叫んで電話が切れた。
当然取引はなし。
後日Aのお父さんが謝罪に来た。A社長も40代なのにそれも衝撃だった。
「友達のいない息子でして…10年前になんとか私の金で会社を興してやったのですが、ずっと部下が半年もしないで辞めてしまって」
としょんぼりしていた。
A社長は衝撃を通り越して宇宙人だな
息子がそんなのだと分かっているのにそれを隠したり放置したりしてるA社長父もヤバすぎる
そんな会社と関わる前に関係が切れて良かったですね
>>199
本当にびっくりでした。
先輩の人脈と、Bさんの良心(恐怖心ともいう)が助けてくれたようなもんです。
上司も私も全く見抜けなかったし、「先代の社長の恩人の息子」というフィルタがかかってたのかも。
人生初のバイトでこんなことになったBさんは本当可哀想でした。
すぐ辞めても訴えられない、あなたは被害者だから!と上司が一生懸命説得し、「明日からは行かない、まず労基に相談する」ということになりました。
労基を通して、無事お給料も払ってもらったそうです。
後日、ご両親と一緒に報告に来てくれました。
Bさんはずっと「申し訳ございませんでした」と頭を下げているので、今回のことは全く責めてない、また頑張って!と会社のみんなで伝えました。
私に対して怒鳴ったのと同じ感じで毎日7時間ぶっ通しで怒鳴り散らされて麻痺してしまい、お給料のため我慢していたと言ってました。
高校に上がって、デジタルイラストを描きたくなったものの、高校生たるものバイトして自分の金で買わなくては!と、画材の為にバイトを開始したので、何とか頑張りたかったんだそうです。
「ミスをした訳でもないのに、とにかく怒鳴られました。パソコンのパスワードを聞いたら怒鳴られ、データを打つためのエクセルの表がどこにあるのか聞いたら怒鳴られました」
とのことで、仕事にすらなってなかった模様。社会人でも初日で裸足で逃げるレベルなのに数日もよく我慢出来たなと驚きました。
謝罪にきたA社長お父さんはまだまともと言いたかったけど、やはり極端。
うちの会社を助けてくれたあなたの息子がなんであんなヤバい人なんだ?ということを丁寧な表現で上司が聞いたところ、あー、このお父さんならそうなるか…と納得した部分すらありました。
相当苦労して、一代で財を築いた人だからか、Aが3歳くらいの頃から、電気一つ消し忘れた、クレヨンを折ったというだけでもボコボコに殴ったそう。
そして夢のマイホームを手に入れた後も、奥さんとAは常に正面玄関ではなく裏口を使わせる、つまり家の人間だと認めないような扱いをしてたんだそうです。
更に金の大切さ、父親のありがたみを教えるために、ホームレス見学をさせてレポートを書かせたりしていたそうです。
そして深くため息ついて、
「今のAは昔の私なんです」
とのことでした。
Aの会社がまだあるのもびっくりなんですが、多分仕事にはなってないと思います。